何をどこまでテストすれば?
まず、どういう種類のテストを書こうとしているか考える。それには、第13章「変更する必要がありますが、どんなテストを書けばよいのかわかりません」が役に立つ。そこでは、〈仕様化テスト〉と〈狙いを定めたテスト〉が紹介されている。〈狙いを定めたテスト〉を書くのが現実的だろう。モンスターメソッドの振る舞いは多様だから、いきなり全体を対象とした〈仕様化テスト〉は書けないことが多そう。次に、モンスターメソッドを読み込んで、狙いを定める。どこまで狙いを絞り込めるかは、モンスターメソッドの作りと必要な変更によってケースバイケースになる。少なくとも自分にとっては、技芸の世界で、筋道立った説明をできない。
狙いが定まったら、検証方法を考える。この時、検証対象が一意に識別できなかったり (例: 別のブランチから同じ結果が返ってくる) 、テストから見えなかったりしたら、〈検出用変数〉または〈クエリメソッド〉を導入する。この時点では、これ以上の編集は避けた方が無難だと思う。やり過ぎると〈編集して祈る〉のと変わらない。
テストを書く
ここまでで、何のためにどの範囲でどんな検証をしないといけないか、具体的になってくるはず。ここまで来たら、テストを書き始める。書き始めたはいいが、モンスターメソッドを持っているクラスをインスタンス化できなかったり、モンスターメソッドの引数をインスタンス化できなかったりすることが多いと思う。その場合は、別の章を参照して対処する (ここでは深入りしない)。- 第09章 このクラスをテストハーネスに入れることができません
- 第10章 このメソッドをテストハーネスで動かすことができません
変更とメソッド抽出
無事にテストが書けたら、実行してパスすることを確認する。この後、必要な変更を行うか、〈メソッドの抽出〉を行うかは、悩ましいところ。変更が局所的なら先に変更してもいいと思う。逆に変更がモンスターメソッドのあちこちに散らばるようなら、先にメソッドを抽出しておかないと後が苦しくなる。いずれにせよ、ここでは変更については触れずに、メソッドの抽出についてまとめる。メソッドを抽出するときには、抽出後に残るメソッドの形を想像しておくと、どういう単位で抽出すればいいか方針を決めやすい。残る形には、〈骨組みメソッド〉と〈処理シーケンス〉の2種類がある。
〈骨組みメソッド〉は制御構造だけを持っていて、条件式や各条件下の処理はメソッドに任せてしまう。『実装パターン』だとConditionalに対応する。『デザインパターン』で例えるとFacadeやMediatorのイメージになる。
もう一つの〈処理シーケンス〉は単に順番にメソッドを呼び出していく。『リーダブル・コード』の無関係の下位問題の抽出を行うイメージ。「いちいちメソッドにするほどの問題ではないんじゃ?」と思っても、メソッドにして意図に即した名前を付けておくとリーダビリティが上がるはず (『実装パターン』のExplaining Message)。
どちらが適しているかは、モンスターメソッドの元々の役割によって変わる。大抵の場合、モンスターメソッドは、実装コストが低いところに追加が集中した結果であって、最初からモンスターメソッドとして生まれたわけではない。処理の振り分けが役割だったなら骨組みメソッド、抽象度の高いAPI提供が目的だったなら処理シーケンスを残す方が自然だと思う。
どういう形を残す決めたら、メソッドを抽出する前に、抽出したメソッドのテストを書く。先にテストを書けばレガシーコードは生まれない。アジャイルじゃなくたって、TDDした方がいいと思う。